エドワード・W・ソジャ『第三空間』本読み会
2020.7.7-7.14
第三回オンライン本読み会では、エドワード・W・ソジャの『第三空間』を取り上げました。
ルフェーブル『空間の生産』の語り口に倣い、”各章を新たな接近、同じ主題に関する別の見方、繰り返される空間的主題にまつわる一連の終わることのない変種として構成することを試みた”との宣言から始まる本書は、現代において「歴史性」、「社会性」に並び立ちその重要性を増すであろう「空間性」を主題とした思考の転換と開放の可能性を提示しています。
タイトルに用いられている《第三空間》について本書は、”現代的な空間性の意識―批判的な地理的想像力―を再定義し、新たな方向へと拡張する”と同時に、空間性に対する意識を”創造的に開かれた状態にしておくこと、またその視野を狭めたり制限したりする試みに抗う”という目標と前提のもと、筆者であるソジャ自身が、”空間性に関して最も興味ぶかい新しい考え方”と見なすものを強調するための言葉として説明しています。そのため《第三空間》は明確な定義こそ示されないものの、各章で扱われる題材を補助線として、常に解釈の余地を持ち続けながら描写され続けます。その中で特に繰り返して強調されるのは、二項対立としてみなされる思考や政治活動の枠組みに対して、対立する二者の両方を包含しつつもそれとは異なる「第三」の選択・立場を用意することで、常に開放的なものとして枠組み自体を作り直し続けるというあり方で、それは「空間性」「周縁」「フェミニズム」「ヘテロトポロジー」などのトピックへと導かれていきます。
なぜ、「空間性」が重要であるのか? なぜ、「周縁」を選び取るのか? その答えは単線的には語られませんが、かえってその”一連の終わることのない変種”としての描写が主題である、「空間性」・「周縁」の捉え所無く、「明確な」定義を行おうとするとたちまち雲散霧消してしまうような性質を示唆し、それに合致した手法なのではないかと納得させられました。