赤門脇トイレデザインコンペティションでM2の木村を含むチームが最優秀賞を受賞しました!
東大の学内生向けに実施された「(仮称)赤門脇トイレ」デザインコンペティションにおいて、岡部研M2の木村くんを含むチームが最優秀賞を受賞しました。
機能を一つに集約してしまう「多目的トイレ」ではなく、それぞれの利用者の求めるものからボトムアップに組み直し3つの便房に機能を分散させるプランを通して、インクルーシブなキャンパスの在り方を提案した点が評価されました。
今後実施設計にも参加し、実際に赤門脇に建設されることになります。完成時期は未定です。
「(仮称)赤門脇トイレ」デザインコンペティションの実施概要と審査結果
一見単純な形の建築物に見えるが、多様な使用者にたいする綿密な配慮に基づいて、機能も形も異なる三つの便房を組み合わせるプランは、次代のパブリックトイレの一つの形を示した、優れて創造的でオリジナルな提案である。(講評より抜粋)
審査後のシンポジウムの様子
〈以下、木村コメント〉
岡部研は意匠やデザインを中心に据えて取り組む研究室ではありませんが、普段考えていることがかなり設計の中で重要なポイントになってきたように思います。
例えば、今回のコンペでは、「インクルーシブな」という言葉が一つのキーワードになっていましたが、これについても普段から研究室で議論していたことからかなりヒントを得ています。
「様々なマイノリティに対する配慮」を詰め込んだ結果としての多目的トイレというものには以前から少し違和感を抱いていました。インクルーシブな社会というときの、社会的包摂というのはマジョリティの輪の中にマイノリティも入れてあげようというようなどこか傲慢なニュアンスがあるような気がしていました。
その背景には、岡部研がフィールドとしているインフォーマルエリアなどを考える際にしばしば出てくる「フォーマルの論理に包摂してくことがインフォーマルエリアの環境改善につながる」という考え方への批判の意識があります。
目指すべきインクルーシブネスというのは、ある一つの方法で多様性を包摂するような解を見出すことではなく、他なるものが他なるままに共存できるための在り方を考えることなのではないか、という感覚がもとになって提案したような機能分散型の平面へとつながっていきました。
また、身体性を伴って環境を感じられるような外壁の仕組みを考えるにあたっては、昨年度勉強会を実施していた『自然なきエコロジー』に登場する「アンビエンス」という概念がもとになっています。
私たちは意識に上らないような閾下でもさまざまな環境を感受しており、実は行為や感覚はそれらに大きな影響をうけています。そうした自分たちをとりまくものが「アンビエンス」であり、明確な形や焦点をもたないそれらとどのように関係づけながら空間をつくれるのか、というのが提案の上でも一つのテーマでした。
それから、こうした議論を進めると同時に、本提案に当たってはかなりたくさんの当事者の方にインタビューを行い、そこから機能の組み分けを考えました。それは実践を重視し、なるべく現場に入って、手足を動かし、生の声に触れることから考えるという岡部研の基本姿勢から来ています。
研究室として取り組んだプロジェクトではないものの、大きくみることで既存の型を疑い、小さくみることで新しい形を模索するプロセスとなり、思えば「スーパーマクロとスーパーミクロ」「着眼大局着手小局」という研究室の合言葉の通りになっていました。
建築系で意匠に取り組みたいという方のなかで、その背後にある社会のこと、環境のことなどを丁寧に考えを組み立てた上で建築を作りたいという方には是非岡部研を候補に入れていただければと思います。
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